登壇者

鹿児島大学大学院 理工学研究科准教授
高橋 哲朗 Tetsuro Takahashi
鹿児島大学大学院理工学研究科准教授。2005年奈良先端科学技術大学院大学博士後期課程修了、博士(工学)。㈱富士通研究所入社、自然言語処理およびデータ分析の研究に従事。2011年〜2012年および2014年〜2015年マサチューセッツ工科大学にてデジタル技術を活用した教育技術の研究。2024年から現職。

株式会社ばんそう 代表取締役CEO
松田 克信 Katsunobu Matsuda

AIと人間の脳について
人間の脳は、なぜ機能するのかという根本的な部分がまだ完全には分かっていません。これは、現在のLLM(Large Language Modelの略、日本語では「大規模言語モデル」)も同様に、なぜ機能しているのかがまだ不明な点が多いことと比較されています。
また、人間の脳は一人ひとり異なるという性質があります。100人いれば100通りの脳があり、それぞれ異なる思考や考え方を持っています。現在のAI、特にLLMを構築するアルゴリズムであるニューラルネットワークは、人間の脳の動きをモデル化したものです。このため、AIが脳と似たような機能を持っているかもしれないと期待します。AI(LLM)の研究が進むことで、人間の脳の解明に近づき、貢献する可能性があります。
これは、倫理的な制約から人間の脳そのものを直接研究するのが難しい(切ったり操作したりすることができない)のに対し、LLMには自由に介入して研究できるためです。脳の研究は、病気で特定の部分を損傷した事例などを用いて、じわじわと進んでいる状況です。過去のアインシュタインの脳の分析例にも触れ、将来的にはアインシュタインのような特定の才能を持つ脳をLLMを使って再現できる可能性も示唆されています。
ただし、これは「近くはない」と考えており、LLMの作り方は分かっていても、脳がどう作られ、どう繋がっているかという根本が理解できていないため、その繋がりをうまく再現できるかが鍵となります。AIの進化がもたらすシンギュラリティや、人類を滅ぼす可能性といった懸念(スティーブン・ホーキングスの発言に触れつつ)されるところです。
そのためには、AIが社会で安全に使われるように、安全性が担保されなければならないですし、安全性確保のために技術開発、ルール作り、規制作りが必要であると考えます。

進化し続けるAIの不安点
AIを研究する目的の一つは、新しいものを作ることに加えて、それによってより良い社会を作る、社会に貢献することにあると考えます。そのためには、AIが社会で安全に使われるように、安全性が担保されなければならないと考えているとし、安全性確保のために技術開発、ルール作り、規制作りが必要です。
株式会社ばんそうとしては、特に人材不足の中堅中小企業や地方企業に対し、AIを活用することで、プロフェッショナルなサービスを安く高品質で提供し、成長を支援できる可能性を感じています。AIが多くの専門家の「右腕」として機能することで、日本の人材不足解消の一助になることを目指しています。ビジネスサイドは、ここにLLMのビジネス活用の大きな可能性を感じています。
現状では、LLMが持つ膨大な知識を利用して、何か質問をして答えてもらう、つまり知識を引き出すという使い方が多いですが、これは既にビジネスでも活用されています。
しかし、今後はここからさらに一歩踏み込んだ使い方ができると考えます。LLMは様々なことを「解釈」することができ、人間しかできなかったような判断もできるようになってきているため、単に質問に答えるだけでなく、何らかの処理や手続きを「仲介」するような動きも可能になってきます。
したがって、今後のAI活用では、質問に答えるという現状の使い方からさらに一歩進んだ使い方が必要になります。

ビジネスへの活用の可能性
AIを使う側も、その使い方のコツや熟練度を高める必要があります。現在の多くのAI活用は、インターネットの検索エンジンを使う感覚の延長線上にある「発展した検索エンジン」としての段階に留まっています。
AI(特にLLM)活用の非常に重要な注意点として、「ハルシネーション」という現象が挙げられます。
ハルシネーションは、「AIが事実であるかのように嘘を言う」と説明されることがあるが、AIに悪気があって嘘をついているわけではないのです。
AI(LLM)が行っているのは、学習した膨大なデータの中から、「普通こういう後にはこれが続く」という、確率的に最も高いものを出力しているだけにすぎません。
したがって、AIが普段回答してくれる内容は、「一番よくありそうなもの」必ずしも真実や事実である保証はないと言えます。AIの回答を使う際は、「これは一番ありそうなものなんだ」と把握した上で使うことが非常に重要となります。これは、AIの回答が確率統計的な考え方に基づいていることとも関連します。このAIの特性を踏まえると、ビジネスにおけるAI活用には向き不向きがあります。
AIは、確率の高い、つまり「間違いじゃないものを選ぶ」といった、すでに確立された情報や世の中に広く浸透している情報をうまく引き出すことが得意です。例えば富士山の高さを聞けば正しい答えが返ってくるように、失敗しない、ミスをしないという観点での活用には適しています。
一方で、AIは確率の低い、「他がやってないからこそやる」、つまりユニークなものやレアなものをそのまま回答として出すことには向いていません。これは、そもそも学習データの中にそういった情報が少ないため、確率として高く出てこないからです。

AIの注意点
AI(LLM)は、確率の高い、つまり「間違いじゃないものを選ぶ」ことが得意です。
具体的には、富士山の高さを聞かれた際に、事実である3776mと正確に回答するように、すでに確立された情報や世の中に広く浸透している情報をうまく引き出すことに非常に向いています。
これは、ビジネスにおいて失敗しない、ミスをしないという観点での活用に適していることです。
一方で、AIは確率の低い、ユニークなものやレアなもの、つまり「他がやってないからこそやる」といったような情報をそのまま回答として出すことには向いていません。これは、学習データの中にそういったユニークな情報が少ないため、回答として出力される確率が低いと言えます。
したがって、AIをビジネスで活用する際には、正確で定型的な情報の扱いに強いという特性を理解することが重要です。

<Part3につづく>


