登壇者

鹿児島大学大学院 理工学研究科准教授
高橋 哲朗 Tetsuro Takahashi
鹿児島大学大学院理工学研究科准教授。2005年奈良先端科学技術大学院大学博士後期課程修了博士(工学)。同年株式会社富士通研究所入社。自然言語処理およびデータ分析の研究に従事。2011 年~2012 年および2014年~2015 年マサチューセッツ工科大学にてデジタル技術を活用した教育技術の研究。2024 年から現職。

株式会社ばんそう 代表取締役CEO
松田 克信 Katsunobu Matsuda
新卒で東京三菱銀行(現 三菱UFJ銀行)に入行、法人融資、不良債権対応、船舶ファイナンスなどの業務を経験。その後、Deloitte Tohmatsu Consulting、Roland Berger、PwC Advisory、MURCなどを経て、ばんそうを創業。経営戦略、事業戦略、資本戦略、M&A、経営管理などを軸に、幅広い業種・規模のクライアントに寄り添ったコンサルティングを実施。PwC Advisoryでは、製造業セクターの戦略領域担当パートナー(役員)として、数多くのクライアントマネジメントやプロジェクトリードを行う。 2021年に株式会社ばんそうを創業し、代表取締役CEOに就任。
2026年の注目AI
2026年に注目されるAI技術として、「エージェントAI」または「エージェンティックAI」が挙げられます。これは単にユーザーの質問に答えるだけのAIではなく、裏側で複数のAIが連携して動き、特定のタスクをこなす仕組みを指します。
例えば「旅費精算」の業務において、ユーザーと対話するAIと、精算項目を自動生成するAIが連携することで、業務そのものを自動で完結させるような使い方が想定されています。これにより、AIがより深くビジネスの現場に入り込むようになります。
業務をAIに任せる際、タスクを極力細かく分けて(例:新幹線の経路検索だけを絶対間違えずに処理する専用AIを作るなど)複数のエージェントを連携させることで、誤りを防げる可能性があります。一方で、AIエージェントの数が増えれば人間と違いコミュニケーションの負担はないものの、細分化しすぎるとコストがかかったり非効率になったりするため、最適なバランスを検証する必要があります。
AIの導入を成功させるには、AI自体の技術的な知識だけでなく、「自社の業務のどこに問題があり、どこを細かくAIに任せるべきか」を判断できる業務理解が不可欠です。そのため、全体を設計・調整できるコーディネーター的な人材やスキルを持つ企業の存在が重要になってきます。

RAGとはそもそも何?
従来のLLM(大規模言語モデル)は過去の学習データに基づいているため、最新の事柄には答えられないという弱点がありました。RAG(Retrieval-Augmented Generation)は、検索(Retrieval)を用いて情報を取得し、その情報も踏まえた上で文章を生成する技術です。
RAGの2つの大きなメリットとしては以下になります。
1.過去のデータにはない「最新の情報」を使って回答できる点。
2.一般に公開されていない「自社内部の蓄積データ」を活用して回答できる点。
通常のAIの使い方が「AIが元々記憶している知識を引っ張り出す」ものであるのに対し、RAGは「検索で用意した材料をもとに、AIに答えを作らせる」というアプローチをとります。つまり、AIの記憶力ではなく「言語処理・編集能力」を活用しているのが大きな特徴です。
検索してくる元の情報の正確性が非常に重要であり、不確かな情報を拾ってきてしまうリスクには注意が必要です(ファクトチェック機能などは別のモジュールに任せる方法が取られます)。
製品マニュアルのように「検索先に必ず答えがある」ことが分かっている用途には非常に有効ですが、顧客の漠然とした困りごとのように「答えが存在するか保証されていない」問題にはうまく機能しないことがあります。RAGは強力ですが万能ではなく、目的に応じて型番で検索するのか、ふわっとした表現で検索するのかなど、設計をきちんと考える必要があります。

<Part4につづく>



