米国データ:AI利用率35.9%
米国における生成AIの浸透は、具体的な数値として私たちの前に現れています。Anthropic(アントロピック)社が2026年に行った労働市場調査によると、2025年12月時点で米国の労働者における生成AIの利用率は35.9%に達しています。これは、約3人に1人がすでに業務でAIを活用している計算になり、日本企業での利用状況とも近い水準です。AIはもはや「遠い未来の技術」ではなく、日々の仕事に深く組み込まれている現実を、私たちは直視しなければなりません。
AI Layoff Trap:雇用需要減
このAIの普及が、実は若手人材の雇用に最初のプレッシャーを与えています。FRBアトランタの調査(論文「AI Layoff Trap」)が示すように、AIの影響を真っ先に受けるのはエントリーレベルや若手の職種です。具体的なデータを見ると、大卒の雇用需要(採用意欲)は0.8%減、高卒に至っては1.1%減と、明確な減少傾向が確認されています。AIの導入が進む一方で、若手の門戸が狭まっているのが今の労働市場のリアルです。
Block社:1万人→5000人レイオフ
米国における象徴的な事例として、決済アプリ「Square」を展開するBlock(ブロック)社の動きが挙げられます。同社はAIを徹底的に活用していく方針を打ち出す中で、現在1万人いる従業員をなんと5,000人規模まで半減させる(レイオフする)という非常にインパクトの大きい計画を進めています。これは若手雇用が削減される波が、すでに具体的な企業の構造改革として押し寄せている証拠です。

エントリー業務の3特徴
なぜ若手や新卒の仕事が最初にAIに奪われてしまうのでしょうか。私は、新入社員が最初に担う「エントリーレベルの業務」に備わっている3つの構造的な特徴が原因だと考えています。
1.手順が決まっていること:
入社後に最初に教わる、マニュアル通りにやれば完了するような定型業務は、真っ先にAIへ置き換わります。
2.反復性が高いこと:
毎日、あるいは毎週繰り返し行う作業は、AIに最も任せやすい領域です。
3.判断を伴わないこと:
重要な決断は上司や管理職が行うため、若手の業務は自分で判断を下さなくてよいものが中心になります。このように「手順が明確で、反復され、判断を要しない」という特徴を持つデータ入力、議事録作成、書類の下書きといった業務は、まさにAIの得意分野そのものなのです。

AI苦手業務と若手活躍機会
一方で、AIが苦手とする業務もあります。それは「人間関係の構築」「不確実な状況下での判断」「創造的なビジネスアイデアの提案」など、従来は経験豊富なベテランが担ってきた領域です。これらの業務はAIに置き換わりにくいため、ベテランの仕事は守られます。しかし、その結果として、定型的な下積み仕事しか任せてもらえない若手からは活躍や成長の機会が奪われてしまうという、深刻な問題が懸念されます。
採用・育成戦略の変化
こうした時代において、私たちは採用と人材育成の戦略を根本から変えていかなければなりません。定型業務をAIに任せていくのであれば、これまでは若手に任せてこなかった「人間関係の構築」や「判断を伴う仕事」、そして「不確実な状況での新たな挑戦」といった役割を、入社初期から新人にどんどん任せていく育成環境を整えるべきです。採用方針についても、単に特定の定型作業がスピーディーにできる人ではなく、人間にしかできない不確実な領域にチャレンジする強い意志を持った人材を積極的に登用することが極めて重要になります。ただし、AIをただ盲信して依存することは防がねばなりません。実務において「AIの出した結果をそのまま提出し、理由を聞かれても『AIが言ったから』としか答えない」といった主体性の欠如が起きては本末転倒です。新卒採用の目的を、単なる定型業務の戦力確保ではなく、AI時代を生き抜くための高度な決断やビジネス創出ができる人材育成へと完全にシフトさせていく必要があると私は確信しています。

まとめ・お知らせ
米国のように容易にレイオフが行われない日本であっても、企業が生き残るためには、定型業務をAIにシフトしつつ、若手が「判断する」「新しいビジネスを立ち上げる」といった高度な挑戦ができる環境を私たちが作っていかなければなりません。今後もAIとキャリア、組織づくりのあり方について発信していきますので、ぜひチャンネル登録をお願いいたします。また、より深い情報交換やAIに関するカジュアルな壁打ちをしてみたいという方がいらっしゃいましたら、問い合わせリンクからいつでもお気軽にご連絡ください。
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