株式会社ばんそう

【アクティビスト対応を考える part2】IR・SRの始め方と、PBR改善へのアプローチ|キエングローバル株式会社 代表取締役 福谷 尚久氏 × ばんそう松田

この動画は、BANSO CHANNELの第7回として、キエングローバル株式会社 代表取締役 福谷 尚久氏 をお招きし、中堅上場企業に向けて会社を守るためのアクティビスト対策と、上場の意義について詳しく解説していきます(全4話の対談)。

登壇者

福谷 尚久

キエングローバル株式会社 代表取締役

福谷 尚久 Naohisa Fukutani

30年を超える投資銀行業務経歴を通じて、米国ヘッジファンドのCornwall Capitalや旭化成、オリックス、センコー、住友商事、大和ハウス工業、東芝、日清紡、ブラザー、JAFCO等の上場企業のほか、中堅・中小企業の事業承継M&A案件を数多く手掛ける。

松田 克信

株式会社ばんそう 代表取締役CEO

松田 克信 Katsunobu Matsuda

新卒で東京三菱銀行(現 三菱UFJ銀行)に入行、法人融資、不良債権対応、船舶ファイナンスなどの業務を経験。その後、Deloitte Tohmatsu Consulting、Roland Berger、PwC Advisory、MURCなどを経て、ばんそうを創業。経営戦略、事業戦略、資本戦略、M&A、経営管理などを軸に、幅広い業種・規模のクライアントに寄り添ったコンサルティングを実施。PwC Advisoryでは、製造業セクターの戦略領域担当パートナー(役員)として、数多くのクライアントマネジメントやプロジェクトリードを行う。 2021年に株式会社ばんそうを創業し、代表取締役CEOに就任。

IR・SRは何からはじめる

これまで日本企業は、銀行や生損保との「持ち合い」や「政策保有株式」という強固な砦に守られており、アクティビストや望まない株主が入り込む余地がありませんでした。しかし現在、その砦はなくなり、企業は裸で資本市場に放り出されている状態にあります。そのため、まずは「自分たちは守られていない」という自覚を持つことが全てのスタートです。

具体的なアクションとして推奨されているのは以下の点です。

意外に機能していないのが、会社のことを一番知っているはずの「役職員持株会」です。ここを整備し、まずは社内からファン株主を増やしていくことは、小さな一歩ですが重要です。

通常、機関投資家を重視するのが定石ですが、あえて「個人株主」を増やす戦略も有効です。例えばカゴメのように、商品自体のファンになってもらうことで、長期保有の株主を増やします。一般的な理論では、個人株主は高値がつけばすぐに売るとされますが、商品のファンである株主は、単に株価を吊り上げられただけでは売却しないため、敵対的買収への防衛策として機能する強さがあります。

多くの企業は何をしていいかわからず主幹事証券会社に相談しますが、彼らは「株式の実務的な運営」のプロであって、アクティビスト対応など「有事のケア」の専門家ではないことが多いため注意が必要です。

マーケットに示すべき事業計画

通常の「中期経営計画」や「事業戦略」と、有事の際に「資本市場(マーケット)に示すべき計画」は、視点が全く異なります。

現在、コンサルタントや金融機関の多くが「対応できます」と言いますが、実際にこの特殊な視点で計画を作れる人材はほとんどいないのが実情です。 実際にあった失敗例として、アクティビストが「社長に会いたい」と言ってきた際、大手証券会社が「会えばいいじゃないですか」とアドバイスしたケースがあります。本来、社長が出ていくのは「最後の最後」であるべきで、安易に会うと手の内を明かすことになります。結果、その企業は内部留保を全て吐き出させられることになりました。
また、「主幹事証券やメインバンクがついているから大丈夫」と考えている企業ほど、実は一番危険です。証券会社の担当者自身がアクティビストと直接対峙した経験が乏しく、「こうしてみたらどうでしょう?」と自信のない提案しかできないケースが多いためです。

PBR1倍割れのケースについて

「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ」と一括りにされますが、水準によって状況とリスクが異なります。
PBR 0.8〜0.9倍の企業は少し頑張れば1倍を超えるため、「1倍前後を維持していれば文句は言われないだろう」と安心しがちです。しかし、本来の実力がPBR3倍のポテンシャルがある企業が1倍程度で満足している場合、買収者から見れば「宝の持ち腐れ」であり、割安で買収できる絶好のターゲットになります。むしろこの水準で甘えている企業の方が、狙われるリスクが高いと言えます。
PBR 0.2〜0.3倍の企業は市場から「会社を解散して資産を分配したほうがマシだ」と言われているに等しい状態です。 ここでは、「創業事業だから」「地域の雇用のため」といった情緒的な理由ですべての事業を守ろうとすると、共倒れになります。

ドイツのマンネスマン社は、元来のパイプ事業に加え、新規の携帯電話事業(後のボーダフォン)で大成功しました。しかし、携帯事業の価値があまりに大きくなった結果、英ボーダフォンから敵対的買収(当時最大規模)を仕掛けられ、会社は解体されました。 低PBRを放置し、主導権を失うと、日本企業であっても外部から買収され、望まない形で事業をバラバラにされる可能性があります。

企業が成長していくには

企業が真に成長するためには、既存の延長線上ではない思考と、経営者の厳しい決断が必要です。

多くの企業は、現在売上の大きい既存事業をベースに成長戦略を描こうとしますが、それでは限界があります。しがらみや制限を設けず、ゼロベースで「本当の企業価値向上」を議論する必要があります。
日本企業には「みんなで一緒に」という農耕民族的なメンタリティがありますが、時には「狩猟民族」的な決断も必要です。「いい人」であり続けようとして全員が沈没するよりは、一部に痛みを伴ってでも、生き残るべき部分を生かす決断が求められます。

M&Aをするかしないか、どの事業を残すか。これらはすべて経営トップの決断であり、一度決めたら軸をぶらさずにやり抜く必要があります。 結論として、会社の規模や質は、その時の「経営者の器」より大きくなることはありません。

<Part3につづく>

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