登壇者

JPスタイル研究所 代表 元デロイトトーマツグループ ブランド&マーケティング担当役員
松下 芳生 Yoshio Matsushita
関西のメーカーを経て、コンサル業界に転職後、デロイトトーマツコンサルティング(前職)の設立に参画。クライアントサービス(戦略立案、業務・組織改革、IT導入)に加え、経営陣としてCMO他を歴任。 2018年に独立後、コロナ禍を機にオンライン研修を開始。ビジネスの「型」と「定石」を惜しみなく伝え、個人と企業の成長に貢献中。 筑波大学大学院経済学修士。「マーケティング戦略ハンドブック」「ITコンサルティング」など著書多数。JIPCC認定コーチ。寿司職人

株式会社ばんそう 代表取締役CEO
松田 克信 Katsunobu Matsuda
新卒で東京三菱銀行(現 三菱UFJ銀行)に入行、法人融資、不良債権対応、船舶ファイナンスなどの業務を経験。その後、Deloitte Tohmatsu Consulting、Roland Berger、PwC Advisory、MURCなどを経て、ばんそうを創業。経営戦略、事業戦略、資本戦略、M&A、経営管理などを軸に、幅広い業種・規模のクライアントに寄り添ったコンサルティングを実施。PwC Advisoryでは、製造業セクターの戦略領域担当パートナー(役員)として、数多くのクライアントマネジメントやプロジェクトリードを行う。 2021年に株式会社ばんそうを創業し、代表取締役CEOに就任。
コンサルティング会社へ依頼する際の注意点
例えば「陸の王者になりたい」というアスリートが居たとします。陸の王者になるためには、それが何を意味するのか(例:野球ではない、陸上競技、100m、あるいは近代五種)をまず決めなければなりません。
もし「近代五種」と決まれば、フェンシング、水泳、ランニング、射撃の5種目でトータルスコアを稼がなければ王者になれないという戦略が生まれます。戦略が生まれると、次に何をすべきか、誰にアドバイスを求めるか、といった具体的な行動やトレーニング(走る距離やタイム、コーチの選定など)がブレイクダウンされてクリアになります。
このプロセスは、誰かが「陸の王者になりたい」という起点(目標)を言わないと、すべてが始まらない、という点に帰結します。
そして「何を目指しているのか」を管理職やその上の層に確認し、組織の方針を明確にする必要があります。目標を落とし込まないと、何のためにやっているかが不明確なまま進められ、ちぐはぐになり、実行する側も疲労感に陥ります。
コンサルタントを効果的に使うための要となるのは、「期限と目標」です。いつまでにどうなりたいのか、という点が非常に重要です。
そしてコンサルティング会社の利用に関して、企業側とコンサルタント側の間に認識のズレが生じることがあります。
目標設定を行い、それを構造化していくプロセスこそが、コンサルティングにおいて最も価値がある部分だと考えられます。過去には、経営者がスタッフと共に壁に付箋を貼り、何を目指すのか、今後どのようなイベントが想定されるか、味方はいるのか、困っていることは何かをすべて書き出し、優先順位をつけ、ロードマップを書いていくという仕事がありました。この作業を行った人たちは社長になっている、という成功例があります。
これは社長だけでなく、中間管理職や若手スタッフがステップアップしたい場合にも同様で、「何年後かにこうなっていたい」という目標を持つことで、そこが起点となり、何をいつまでにやるべきか逆算で決まってくることになります。

社内の異なる考え方や立場への対応
クライアント側がコンサルタントをうまく活用できない場合、社内政治的な制限やリスク回避の思考から、物事を「構造化」できずに、結局コンサルタントの助言がクライアントの言ったことをまとめただけの「コピーライティング的」なコンサルティングに終わってしまうことがあります。
リスクがあるのは当たり前ですが、リスクを負いたくない、あるいは初めてやるようなことに確信が持てないため、「そのうちやります」「すでにやっています」と言いつつ、抵抗を示すクライアントもいます。
抵抗を破るには、本当に小さくても良いので、実感が持てる何かを達成できると流れが変わります。
例えばプロジェクトチーム内で「楽しくやろう」「なんか知らないけどあいつら楽しそうだよね」という雰囲気を作り出し、小さな幸せを共有することが重要です。
小さな成功が広がり、波に乗っていない周りの人々が「バスに乗り遅れるんじゃないか」と取り残されるような不安を感じた時、一気に変革が広がっていきます。
夢のように一瞬で全てが変わることはなく、成功を積み重ねる必要があります。全社的な変革には、システムの刷新が大きなドライバーになりますが、最終的には個人の熱量が重要です。
ヤッホーブルーイング(代表的な商品は『よなよなエール』)の事例ですが、業績が悪化した時に、社長が中期計画を立て、毎朝の朝礼で目標を徹底しようとしたものの、みんな下を向いて聞き、人が辞めていくなど失敗しました。
そこで別のコンサルタントからの助言は「雑談をしろ」というものでした。コミュニケーションのピラミッドにおいて、ロジックや目的に関する上澄みの情報だけでは人は動かない。底辺の部分で、昨日見たテレビの話や子供と遊んだ話など、とにかく30分間雑談をすることを実行したところ、朝礼が楽しくなり、人が動くようになったといいます。
人に対する信頼は、知的な部分や論理性からではなく、「普段こんな人なのに、こういう側面もあるんだ」という多面性を捉えることによって生まれます。一体感がないと物事は動かないため、コンサルタントとクライアントの関係においても、信頼関係の構築が重要です。

コンサルタントとクライアントの垣根を無くすには
慣れていない企業は、コンサルタントに対して「話しかけづらい」といった距離感を持つことが多いです。コミュニケーションが不足すると、期待値のズレが生じ、フラストレーションが溜まる結果となります。
コンサルティングをうまく使うためには、企業側もコンサルタント側も、良い意味で垣根なく「一緒にやるんですよ」という雰囲気を早く出すことが大切です。
チーム間の壁を取り払うためのアイスブレイクは必須であり、コンサルタント側から積極的に行った方が良いです。現場のプロジェクトマネージャーやスタッフは慣れていないため、コンサルタントになる前は何をしていたかなど、人間同士としてのコミュニケーションを取るべきです。
そして重要なこととして、レスポンスの速さ(レスポンシブネス)が挙げられます。品質に関わらず、Instagramなどでいいねがすぐ返ってくると嬉しいように、メールに早くレスを返すこと、頼まれたことを守ることを繰り返すことで、頼みやすくなったり、相手も応えてくれたりするようになります。
「新聞にこんな記事が載ってましたがそちらの会社は大丈夫ですか?」「この沿線で事故があったみたいですけどお変わりありませんか?」などと尋ねたり、社員の状況を心配したりするなど、細かい心遣いを見せることが、相手に心をかけているというサインになり、相手も心を開いてくれるようになります。
最終的に、人は感情で動くため、技術的な側面だけでなく、人間的な信頼関係の構築が成功の鍵となります。

<Part3につづく>
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