登壇者

Carbide Ventures, General Partner トレジャーデータ株式会社 代表取締役
堀内 健后 Kengo Horiuchi
コンサルティング会社、証券会社を経て、2013年にトレジャーデータの日本事業立ち上げに参画。マーケティング・ディレクターとして、トレジャーデータの主力サービスであるデジタルマーケティング分野におけるカスタマーデータプラットフォームのPRから案件開拓までを担当。2021年8月にトレジャーデータの創業メンバー等と、シリコンバレーと東京に拠点を持つベンチャーキャピタル、Carbide Venturesを設立。日米を中心に、エンタープライズSaaSなどのスタートアップに投資し、スタートアップの企業価値向上に務める。現在、Carbide Venturesジェネラル・パートナーならびにトレジャーデータ株式会社代表取締役を務める。

株式会社ばんそう 代表取締役CEO
松田 克信 Katsunobu Matsuda
デジタルをマーケティングに使う利点
現代のビジネス環境では、事業そのものがデジタル化しており、企業は組織全体を変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が不可欠です。特に顧客との接点が変化した営業やマーケティングの分野では、DXが強く求められており、ITの活用が必須となっています。
かつては営業担当者の「察知能力」によって顧客のニーズを把握していましたが、ウェブサイトでの購入が主流となり、対面での接点が減少した現代では、顧客がなぜその商品を選び、どこから来たのかといった情報を、データとして取得し分析しなければ把握できない状況です。例えば、テスラの車のようにウェブサイトを通じて購入される場合、顧客がその車を選んだ理由や購入経路といった詳細な情報は、データ分析によってのみ把握可能です。そのため、データ分析は必須の要件となっています。
データが豊富に収集されるようになると、そのデータを活用してAI(人工知能)を導入することが可能になります。AIは、大量の事例(例えば「AならばB、BならばC」といった三段論法的な推論)を学習することで、自ら判断を下せるようになります。このような判断プロセスを大量のデータからAIによって構築できるため、大量のデータを収集・分析できる環境を持つ中国などがAI分野で強みを発揮しています。このAIはソフトウェアであるため、日本企業もその活用は可能です。
ビジネス体系の変化は、かつての10年単位から現在では半年単位と急激に加速しており、これに追いつくことが多くの企業にとって大きな課題です。特に経営資源が限られている中小企業にとっては、ビッグデータ、DX、最近ではSXといったキーワードへの対応が困難であり、対応できる企業との間で格差が拡大する傾向にあります。この状況を放置すれば、経営資源が豊富な企業が有利となる世界観が必然的に訪れるとされています。

中堅・中小企業のデジタルマーケティング事例
経営資源が潤沢ではない企業でも、デジタル対応やマーケティング力強化を進めるための具体的な工夫が提案されています。
企業が自社でできないことを、顧客を巻き込むことで可能にするアプローチです。ソーシャルネットワークの世界では、顧客が自社の商品についてポジティブな評価を発信することで、それは強力なPR効果やマーケティング施策となり得ます。具体的には、顧客がSNS上で製品のポジティブなレビューを共有したり、使い方を紹介したりすることが、その周囲の人々への認知拡大に繋がり、結果的に新規顧客獲得にも貢献します。本質的に重要なのは、顧客との関係構築と、顧客を喜ばせる商品の提供です。
ソーシャルメディア(LINE、Instagram、TikTokなど)の活用は、比較的少人数でも実施可能です。デジタル分野では、試行錯誤に対する損失が少ないという明確なメリットがあります。例えば、工場建設のような巨額の投資とは異なり、ソーシャルメディアは数万円程度の少額から始めることができ、改善スピードが速いため、反応が薄かった施策も迅速に改善していくことが可能です。具体的には、商品を説明する動画や、商品の背景を伝える動画、インフルエンサーによる紹介などもデジタルマーケティング・セールスの一環であり、対応は早ければ早いほど良いですが、今からでもすぐに始めることができます。

SNS活動を継続するためには
デジタル施策、特にSNSの活用は、始める際のハードルが低いものが多いですが、一度始めて終わりではなく、継続的な取り組みが必要です。この継続性が、特に経営資源が限られた企業にとって負担となる場合があります。 この課題に対し、社内にいるであろう若い世代やデジタルリテラシーの高い人材に任せることが有効です。AIエンジニアが高額な報酬を得ている状況と同様に、優秀な人材は社内に存在しているにもかかわらず、人事異動などで埋もれている可能性があります。そのため、社内で埋もれている可能性のある、SNSやデジタルツールに精通した若手社員や、自社製品への深い理解を持つ人材を見つけ出し、彼らにデジタルマーケティングの企画・実行を委ねるという活動が重要です。 最も重要なのは、自社商品の理解、強みの理解、顧客の理解であり、これらを基に実行できる人材を社内で見つけ出すことです。もし社内に適任者がいない、または時間や人材が不足している場合は、地域の人材や外部のパートナーを活用することも考えられます。全てを自社でまかなうのは難しく、全てを外部に丸投げするのも成功しにくいです。自社の商品を最も理解しているのは自社であるため、外部のベンダーを単なる発注先としてではなく、パートナーとして協力関係を築くことが重要です。具体的には、デジタルマーケティング専門のコンサルタントやウェブサイト制作会社に対し、自社の目標や製品の特性を深く共有し、長期的な視点で共に戦略を練り、実行していく関係性を構築することが求められます。

マーケティングパートナー選びのポイント
また、社外の人材を活用する際の一つのポイントとして、既にその商品のファンである人を選ぶという方法があります。ワークマンなどの成功事例にも見られるように、商品を深く愛し、その使い方を熟知しているユーザーをアンバサダーとして起用することで効果が得られます。自社の社員は商品を毎日見ているため、その価値を完全に理解しているつもりでも、意外な価値や優れた使い方に気づけないことがあります。このような場合、外部の人間や若い世代(老舗企業の場合)を登用することで、異なる視点を得ることが非常に重要になります。これは、ダイバーシティ&インクルージョンが世界中で重視されている理由でもあり、同じ視点だけでは同じことしか生まれないためです。
異なる視点を持つ人材を導入することは、相互理解の点で困難を伴う場合がありますが、しっかりと相互理解を図り、目的を明確に持つことで強力な成果を生み出すことができます。単に「知られればいい」といった漠然とした目的ではなく、「特定のターゲット層に製品の〇〇という特性を伝え、△△という行動変容を促す」といった具体的な目標を設定し、それを関係者全員で共有することが重要です。クライアント側がしっかりと責任をもって目標設定を行うマインドセットが必要です。

<Part4につづく>
関連記事
Related Column

【デジタルマーケの基本と最新トレンド Part1】今さら聞けない、マーケティングの本質とは?|Carbide Ventures堀内健后氏 × ばんそう松田

【デジタルマーケの基本と最新トレンド Part2】営業とマーケの分断、どう乗り越える?|Carbide Ventures堀内健后氏 × ばんそう松田

【デジタルマーケの基本と最新トレンド Part3】中小企業でもできる!デジタル活用のリアル|Carbide Ventures堀内健后氏 × ばんそう松田

【デジタルマーケの基本と最新トレンド Part4】AIで変わるマーケの未来と、今すぐ始めるべき理由|Carbide Ventures堀内健后氏 × ばんそう松田