株式会社ばんそう

【インドM&A最前線 Part2】話が嚙み合わない!?意思決定とコミュニケーションの落とし穴|株式会社マナスコーポレートパートナーズ 岡田知也氏 × ばんそう松田

この動画は、BANSO CHANNELの第3回として、日本とインドのM&Aに特化したアドバイザリー会社を経営する岡田知也氏をお招きし、インドにおけるM&Aの現状と変遷、特に日本企業のインド進出の傾向、規制緩和の動向、そして進出形態の選択肢について解説していきます(全4話の対談)。

登壇者

岡田 知也

株式会社マナスコーポレートパートナーズ 代表取締役

岡田 知也 Tomoya Okada

青山学院大学国際政治経済学部卒。 1999年4月東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に入行、その後三菱UFJ証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)に出向しM&Aアドバイザリー業務に従事。 2007年M&Aアドバイザリー専業のGCA株式会社に転職。2009年から3年半、GCAのインド事業立ち上げでムンバイに駐在。帰任後も一貫してインドM&Aに関与。2020年3月末にGCAを退職し、株式会社マナスコーポレートパートナーズを設立。

松田 克信

株式会社ばんそう 代表取締役CEO

松田 克信 Katsunobu Matsuda

インドとのコミュニケーションの注意点

日本とインドはそれぞれコミュニケーションの「癖」が強く、互いの相性が悪いと感じられることが多いと指摘されています。

日本は「多くを語ることは野暮」や「言わなくても分かるよね」というハイコンテクストなコミュニケーションスタイルが典型です。M&Aの交渉では、例えば「お前が今まで作ってきた会社の価値、お前は100と言うかもしれないけど、俺にとってはせいぜい60だ!」といった価値認識の違いも、暗黙の了解や非言語的なニュアンスで伝わることを前提に進みがちです。

一方、インドは国内に10数個の公用語があり、ビジネスでは主に英語が使われます。この多言語環境のため、インドの人々は誤解を減らすために細かいことや、なぜそのように考えるのかという背景・前提を含めて話すことに慣れています。彼らとの会話では「I'll tell you why」のように、考えに至った背景から説明を始める傾向があり、日本人にとっては回りくどく感じられることがあります。日本人としては、相手の考えの背景を丁寧に聞く姿勢が重要であり、また、日本が「10言って100伝わる」感覚であるのに対し、インドでは「200言って75伝わるかどうか」という発想で臨むことが求められます。

インドの人々は比較的遵守精神が高いため、契約書に明記されていることはきちんと守りますが、書かれていないことは「こちらはそういう解釈だ」と主張される傾向があります。

日本人同士のビジネスで一般的な「誠実協議」という、問題があった場合に誠実に話し合って解決するという約束は、インドでは機能しないとされています。そのため、法的文書の交渉においては、「そこまで言わなくてもいいのではないか」と感じるような点まで含め、詳細に詰めていくことが非常に重要です。

紛争時に、たとえ契約で株式を売りつける権利(例:合弁関係解消時の売却権)が明記されていても、相手がその権利の行使を拒否するなど、契約を破るパターンが見られます。これは、「仲が悪くなった日本企業が勝手にインドでビジネスをやるのは気に入らん」という感情から、相手を「この箱に縛りつけておく」意図がある場合もあるため注意が必要です。結果として、日本企業が株式を保有している限り他社とビジネスができない袋小路に陥るケースもあります。

意思決定における注意点

日本の企業文化では合議による意思決定が一般的ですが、インドの企業における意思決定は圧倒的にトップダウンです。

インドの企業を語る上で重要なキーワードである「プロモーター」は、法律にも定義されており、会社を支配する特定の個人を指します。日本の企業が「法人」という概念で育む箱として存在するのに対し、インドの企業は「特定の個人が作った特定の個人の目的を達成するための機能」として存在することが多いため、物事を最終的に決定するのは、その個人である株主であることが多いです。

プロモーターが気に入らないと、どれだけ議論を重ねても最終段階で決定が覆されるのは当然のことと認識しておく必要があります。日本企業間では「あの時こう言った」「議事録にも残っている」という議論が意味を持ちますが、インドでは「その後、気が変わったから」と言われれば、それで終わりになることがあり、議事録で相手を縛ろうとする努力はあまり意味がない場合もあります。

中堅・中小企業に向けたインドビジネスの注意点

規模の大きくない企業がインドでビジネスを行う際には、「自分たちが正しい」という感情的な判断を排し、まず相手を傾聴するスタイルが非常に重要です。

豊富な海外リソースがない場合、シニアマネジメント層のコミットメントが、インドに駐在している社員を支える上で不可欠です。具体的には、半年から1年に一度は日本から出張で現地を訪れ、日本食材を持っていくなど、駐在員をサポートする姿勢を見せることが重要です。

食事を共にするコミュニケーションは?

インドは東アジアや日本のように、前後不覚になるまで酔っ払って信頼関係を築く文化ではないようです。

むしろ、ビジネス上で親しくなった相手の自宅に招かれ、食事の後にとっておきのウイスキーを静かに嗜むような飲酒文化に近いと考えられます。

<Part3につづく>

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